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【レポート】2013/08/10 『かもめ食堂』上映ワークショップ@Kahvila Suomi & 食堂KIRARA

2013年8月12日 (レポート)

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昨年のヘルシンキ滞在中に、次回はここで何かやりたいなぁと漠然と思って帰国。そして、『かもめ食堂』を舞台となったKahvila Suomiで上映するのが面白いんじゃない?という話になったのは、2月のある日、ユタカナさんとのトークの中でだった。約半年後、ホントに実現するとは。為せば成る。笑。
公に強く言い始めたのは、3月に開催した『かもめ食堂』ワークショップでのこと。「Kahvila Suomiで今日と同じように上映ワークショップをやろうと思ってるんですよ!」と言ってはみたが、みんなウソだと思ってるかなーと半信半疑だった。が、その後「一緒に企画を考えませんか?」という問いかけにワークショップ参加者28名中7人(後に6人に)から連絡があった。正直びっくりした。でもホントに私、やるんだな、と決意を固めたのもこの時だった。「面白そうじゃないですか」と企画に参加してくれたメンバーと一緒に、8月10日をヘルシンキと東京で迎えられれば、それだけで8割方成功したも同然だ。とは言っても、ヘルシンキに行くのは私一人。様々な不安要素を抱えながら、フィンランドへ旅立った。7月中旬からヘルシンキ・東京共に参加者募集の告知を始めたが、抽選制にしていた東京は、最終的に定員30名のところ230名以上の方々から応募があった。添えられた熱いメッセージから『かもめ食堂』がどんなに大事にされている映画か、ひしひしと伝わってきた。東京にいるメンバーが抽選を行なったが、本当に辛い作業だったと思う。ヘルシンキの方も友人らのシェアや告知によって、定員近い参加申込があった。フライヤーを少し作って持ってきたので、カフェ等に置かせて貰おうと思っていたが、敢えてやめた(後から思うとやっても良かった)。告知の中にちらりと「お手伝いしてくださる日本人の方はご連絡下さい」と日本語で書いておくと、ヘルシンキでフィンランド語の学校に通っている3名の方から申し出があった。有り難い。到着2日後にKahvila Suomiに挨拶に。2月に初めて連絡をした時に「Very interesting!」と言ってくれたご主人のTapaniさんと初対面。諸々の確認をして、閉店後にスクリーニングテストをすることも了承してくれた。打ち合せ中の東京のメンバーとSkypeで繋いでみる。おー!ちゃんと繋がった!開催3日前にやっとの思いで作り上げたお手製のスクリーンを使ってテスト。予想よりスクリーンがちゃんとハマって、嬉しい驚き。これでホントに何とかなりそうな気がしてきた。

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いよいよ当日。ほぼ同じ時間からヘルシンキも東京も準備を始めた。この日、ヘルシンキは少し寒くて20℃以下だったが、東京は37℃の猛暑日だった。夜の開催で本当に良かった。浴衣コスプレの私はあまり動けなかったので、ヘルシンキで手伝ってくれるスタッフさんたちがそれぞれの持ち味で準備を進めてくれてうれしい。東京とSkypeテスト。つながった。本番もちゃんとつながることを祈りつつ、東京は開場した。

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東京の会場は中目黒の食堂KIRARA。旬の食材を選んで”自分定食”を作れるKIRARAさんが、この上映会のために『かもめ食堂』にちなんだごはんとシナモンロールを用意してくれた。上映30分前までには参加者全員(ちょうど30名)が揃い、ごはんを食べて写真を撮ったりしながら、静かに上映を待っていた。予定より少し早めに上映を開始することに。

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その頃、ヘルシンキでは開場前に急遽予定が変更になり、ワークショップ前に焼きたてのシナモンロールを出すことになった。Ariaさんが慣れた手つきでシナモンロールを作り始める。「シナモンロールって難しいですよね」と言うと「毎日やってるからねー」と笑う。無事開場して、東京から遅れること40分くらいでヘルシンキも上映開始。その前にイベントの趣旨や流れなどを英語で説明。私は帰国子女でも留学経験もない普通の人なので、ものすごく緊張した。参加者は全部で17名。簡単に自己紹介をして貰ったところ、フィンランド人が半分くらいで、後はトルコ、コロンビア、ロシア、ドイツ、ポーランド、日本から。この後のワークショップが楽しみな編成だ。上映中は時折笑いがあり(特にミドリさんはツボみたいだった)、和やかな雰囲気。ああ、本当に“かもめ食堂”で『かもめ食堂』を観ているのだなぁとしみじみ。スクリーンに映っている通りとスクリーン横からちらりと見える通りが同じことに、何とも言えぬ感動があった。ロケーションで観るってやはり面白いなと再確認できた。

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東京は先に上映終了。その後、22名の方が残ってダイアローグ。スタッフから少し説明をして、話しやすいように円形にイスを並べて下さいとお願いすると、後はそれぞれ自然と話が盛り上がる素晴らしい展開に。フィンランドに行ったことがある人はない人に行った場所の話をしたり、映画の好きなところの話をしたり、一緒に好きな映画を観たことですぐに思いを共有できることを楽しんでいるようだった。話し足りないからFacebookで繋がりましょう!ごはん会をしましょう!と言った声も聞こえてきて、映画をきっかけに新たなつながりも生まれていた。教育関係の仕事をされている方からは、こういうワークショップは良い学びになるし、視野が広がっていいとの言葉もあったとか。そんな楽しい雰囲気を肌で感じることが出来ず、ヘルシンキにいた私は本当に悔しかった。

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ヘルシンキも上映終了。コーヒーとシナモンロールのいい匂いに包まれる。これこそ、“かもめ食堂”だなぁと、映画を観た直後だけに、参加者の誰もが思ったはず。シナモンロールを食べながら、お待ちかねの東京とSkypeで繋ぐ。無事繋がった!ヘルシンキでは特に知らせていなかったので、東京と繋がったことにものすごく驚いていた。待ってくれていた東京では歓声が上がる。「何を食べてるんですか?」「シナモンロールです。フィンランド語では”korvapuusti”と言って、ぶたれて潰れた耳の意味です」、「そちらは今、何度ですか?こちらは37℃です」「えー!こちらは20℃くらいです」と言ったやり取りや、ご主人のTapaniさんが「ここKahvila Suomiに来たことある人はいますか?」という質問をしたところ、半分くらいの人が手を挙げたことに、Tapaniさんは「こんな嬉しいことってないよ!」と大興奮。ただただ企画に喜んで協力してくれたTapaniさんに、少しは返すことが出来たかなと嬉しい瞬間だった。いつまでも繋げておきたい気持ちを抑えて、ヘルシンキでは繋いだまま、ワークショップを開始する。東京ではそのまま上映会終了に。
東京のスタッフより:「とにかく無事開催でき、ホッとしたというのが正直な気持ちです。振り返ると映画上映中のコンディションや食事の場作りなど、もっとできることがあったなぁと思いつつ、映画後の交流の雰囲気や、ヘルシンキとつながったときの歓声はすごく嬉しいものでした。 同じ映画を好きな人が集まって、その好きな気持ちを共有しあうって、すごく素敵で贅沢な場だなと思いました。この会での縁がきっかけで、人のつながりが生まれていたらいいなと思います。キララ食堂のみなさんにも本当感謝です。ありがとうございました!」

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ワークショップの中身をどうするか、3月からずっと考えてきた。スタッフは私しかいないかもしれない、どんな人たちが何人参加するか事前に分からない、自分が必死にならずに楽しめるものにしたい、などなど、色んな条件を鑑みて、”What is your soul food?”という問いかけをして、それを一人ずつ考えて紙に書き、先ずテーブルで、その後みんなでシェアして貰うことにした。ソウルフードとは何か?という問いは、3月に東京でやったワークショップでも出て来たが、日本人は意外とすんなり受け入れられるし、イメージしやすい。しかし、事前にフィンランド人の友人たちに聞いてみたところ、答えに窮していた。なので、ワークショップを始める前に「このワークショップでは、ソウルフードとは“あなたの想い出と結びついている食べ物”と定義します」と説明した。これも3月のワークショップの時に参加者から出て来た言葉にヒントを得た。そうすると、みんな頷き、書いたり話したりし始めた。良かった!3月の東京から8月のヘルシンキへ、ワークショップが見事につながった。

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しばらくテーブルでダイアローグ。絵を描いたり、どんどん列挙していったり、テーブルごとにさまざま。「いい思い出じゃないソウルフードもあるよね」と、お母さんがどうにもまずいポーリッジ(フィンランド人の代表的朝食)を作り続けて、すっかりトラウマになった話に爆笑したり、日本とフィンランドの食べ物を比べて盛り上がり、なかなか紙に書けなかったり。その後、一人ずつ、想い出と一緒にそれぞれのソウルフードをシェア。想い出のほとんどは家族との想い出。おばあちゃん、お母さんから伝わる味。そして、生まれ育った故郷の素材、その国・地方ならではの料理。当然だが、同じフィンランドでもかなり違う。子どもの頃に自分が担当して作っていた料理、旅の想い出とつながる味、外国にいるからこそ食べたくなるもの、日本の居酒屋で楽しんだ料理など、食べ物の想い出は、どんなにバックグラウンドが違っても共有できるから不思議だ。話を聞いていると、ふっと食べている風景が浮かんでくる気がした。

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書いて貰ったものを鏡に貼っていって更にシェア。それから、本当はワークショップ中に食べるはずだった料理で使って貰う予定だったお箸とお箸袋の話をした。日本の大事な食文化「いただきます」の感謝の気持ちと、南三陸町のおじいちゃん、おばあちゃん、子どもたちが込めたお箸袋への思いが、私の拙い英語で伝わったかは大変不安だったが、おみやげに喜んで持って帰ってくれた。更に希望者に「トンミヒルトネン=豚耳昼斗念」と同じく、名前の当て字をスタッフさんたちに書いて貰う。これこそ、日本人にしか出来ないお手伝いだったので、もっとフューチャーさせたかったのだが、最後バタバタになってしまった。参加者からは「(映画を観て)日本の食や文化により興味を持った」「マサコ、面白い!彼女たちの自然な関係性が興味深かった」「あまり出会えないような人たちと出会えて楽しかった」「(近所に住んでいるので)日本人がこの何もないエリアにたくさん来ている理由がよく分かった」「映画と同じように、実際の食堂の家具もフィンランド・デザインにしちゃえばいいのにね」「(サチエさんが言った)“やりたくないことはしない”に共感した。日本人の考え方に興味を持った」「今までに経験したことのない面白いイベントだった」などのコメントを貰った。運営に協力してくれていたフィンランド人に「フィンランドでイベントをすると半分くればいい方だから、今日はよくやったと思うよ」と言われ、ホッとした反面、フィンランドでやることの厳しさも知った。いつもと同じく、たくさんの反省が残ったが、ほぼいつもと同じ構成のkinologueのワークショップがフィンランドで出来たことは、大きな収穫だった。そして、この貴重な経験をもたらしてくれた、たくさんの温かい手に、ただただ感謝の想いでいっぱいだ。


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